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再婚禁止期間って?再婚禁止期間の判例や改正をわかりやすく解説!
水野 文也F.Mizuno
1:再婚禁止期間とは?
不倫の末に離婚に至ったり、不倫相手とめでたく結ばれて再婚……といった話は、そうそうよくある話ではありませんが、ありえる話ですよね。それが男性であれば、離婚した直後にでも婚姻届を役所に出すことができますが、女性の場合は、少しの間待たなければなりません。それは民法に「再婚禁止期間」が定められているから。
女性は妊娠する可能性があるため、その子の父親が前の夫の子なのか、新たな夫の子なのかを特定するために、明治時代の民法施行から規定されてきました。
2:再婚禁止期間の改正のポイント
(1)女性は離婚してから100日間、再婚ができない!?
まず、民法の再婚禁止期間の条文を見てみましょう。
民放第七百三十三条
「女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して百日を経過した後でなければ、再婚をすることができない」
現在の日本で、女性は離婚してから100日間は再婚することができません。実際には、同棲するなど事実上、結婚しているのと同じケースがあると思われますが、法律上は認められないのです。
男性はすぐに再婚できるから、男女平等という意味で不公平と感じるかもしれません。ですが、女性は妊娠する可能性があるため、離婚から再婚までの期間に受胎した場合、その子の父親を特定しなければなりません。つまり、子どもを保護するために必要な規定なのです。
(2)民法改正で期間が6か月から短縮
以前の再婚禁止期間は、6か月間と定められていました。しかし、それは長すぎるのではないかという議論があり、2015年(平成27年)12月16日に、再婚禁止期間の100日を超える部分について過剰な制約であると、最高裁は違憲判決を下し、これが期間短縮のきっかけになりました。
それに従って、今から3年前の2016年(平成28年)6月7日に民法が改正され、現在の100日間に短縮されました。
(3)子どもを保護するための規定
民法733条には、以下のように続きがあります。
前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合
女が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合
これを読んでもわかるように、規定が前述したように子どもの保護のためにあることは明らかでしょう。
民法では、婚姻の日から200日以後もしくは離婚から300日以内に妻が出産した場合、その子どもを夫の子どもとしていますが、離婚後すぐに再婚をすると、この期間に重複する期間ができてしまい、子どもの父親を特定することが難しくなってしまいます。
「今はDNA鑑定とか進んでいるから、日数なんてどうでもいいことなんじゃないの?」──そういった意見があるかもしれません。しかし、DNA鑑定をするまでに不確定な状態に陥っていたのでは、子どもにとって不幸なことでしょう。そうした混乱を防ぐための規定なのです。
(4)離婚した後に前夫とヨリを戻す場合は…
もっとも、何事にも例外があり、この規定もそれに漏れません。再婚後に生まれた子どもの父親を特定できるのであれば、すぐに再婚することができます。
例えば、一時的な感情で夫と離婚した後、衝動的だったために別れたことを後悔して、直後にヨリを戻すようなケースはどうでしょう。生まれてくる子どもは、夫の子であると推定することができます。
このように、あくまでも再婚禁止期間は、子どもの保護に主眼が置かれているので、明らかに子どもの父親がわかる場合は、すぐに再婚しても問題はありません。
3:再婚禁止期間の例外って?
他に、例外としてどのようなケースがあるのか、見てみましょう。
離婚した夫と、まったく接触していないのであれば、子どもができることはありません。それが法律上で明らかな場合、具体的には、3年以上の間、夫の生死が不明となり離婚判決があった場合は、すぐに再婚できます。
このほか、離婚する前から妊娠しているケースも、前夫との子と推定が可能。ただ、この場合、妻が夫以外の男性との間に子どもができた場合、夫から「嫡出否認の訴え」をしてもらうことになります。
また、再婚する際に懐胎していなければ再婚できますが、この場合、女性が懐胎していないことの示す証明書を医師に書いてもらい、婚姻の届出の際に提出する必要があります。
4:まとめ
再婚禁止期間は、前夫との関係といった「しがらみ」などを理由に設けられているのではないことをがわかりましたね。婚姻は自由。ですが、不幸のタネを蒔くようなことがあってはなりません。その前後にできた子どもを不幸にしないためのルールなのです。
100日というと、すごく長いような気もしますが、長い人生からしたら短いもの。もし該当する人であっても、その間に愛情を深めていけばいいのではないでしょうか。