神保町シアター

S36('61)／東宝／カラー／シネスコ／1時間36分

■監督：岡本喜八■原作：大藪春彦■脚本：池田一朗、小川英■撮影：太田幸男■美術：村木忍■出演：加山雄三、水野久美、ミッキー・カーチス、平田昭彦、田崎潤、中丸忠雄、島崎雪子

アラスカ帰りの息子が、父を殺した犯人を探すため、対立する二つの組織の争いの渦中へ―。岡本喜八の"暗黒街"ものに連なる痛快作で、ミッキー・カーチスら喜八映画の常連が弾ける。

♪金管楽器群の量感溢れるハードボイルドなスコアはもちろん、冒頭の挿入歌もお聴き逃しなく！

S40('65)／東映東京／白黒／シネスコ／1時間57分

■監督：山本薩夫■脚本：高岩肇、武田敦■撮影：仲沢半次郎■美術：森幹男■出演：三國連太郎、佐久間良子、伊藤雄之助、江原真二郎、緑魔子、市原悦子、千葉真一

戦後最大の冤罪事件、「松川事件」を下敷きにした社会派喜劇の傑作。腕利きの土蔵破りの男が深夜に目撃したのは…。主演賞総ナメの三國の快演とクセ者の共演陣が骨太な笑いと感動を呼ぶ。

♪硬軟併せ持つ池野のスコアが堅実に物語を支えている。タイトル曲にはファリャの作品からの引用も顔を出す。

S43('68)／大映京都／カラー／シネスコ／1時間19分

■監督：黒田義之■脚本：吉田哲郎■撮影：今井ひろし■美術：太田誠一、加藤茂■出演：青山良彦、川崎あかね、内田朝雄、大川修、神田隆、木村玄、若井はんじ・けんじ

江戸の昔、日本古来の妖怪達が総結集し、四千年の眠りから甦った吸血妖怪ダイモンに立ち向かう。河童、油すまし、ろくろ首など、妖怪軍団の愉快で涙ぐましい活躍に心打たれる特撮時代劇。

♪本作では日本と異国の妖怪のキャラクターを明確に表現仕分け、かつ格調高いラストにも深く関わっている。

S43('68)／大映京都／カラー／シネスコ／1時間29分

■監督：山本薩夫■脚本：依田義賢■撮影：牧浦地志■美術：西岡善信■出演：本郷功次郎、赤座美代子、西村晃、小川真由美、大塚道子、志村喬

貧乏長屋で寺子屋を開く武士が遊女と出会い、惹かれあうが…。三遊亭圓朝で有名な怪異譚に材を得た怪談映画の傑作。時代劇の粋を尽くした背筋も凍る恐怖と哀切な情緒が胸に迫る

♪正統派時代劇の格調を保ちながら、恐怖のサウンドと耽美な愛のテーマがロマン・ホラーの世界を織りなしていく。

S36('61)／東京映画＝東宝／カラー／シネスコ／1時間39分

■監督：川島雄三■原作：大岡昇平■脚本：菊島隆三■撮影：岡崎宏三■美術：小島基司■出演：池内淳子、池部良、三橋達也、佐野周二、高島忠夫、有島一郎、淡島千景、山岡久乃

文壇バーのホステスとして名を馳せた実在の女性をモデルに描く風俗ドラマ。衝撃の冒頭シーンと主人公の回想で綴られる男性遍歴の物語展開も刺激的。池内淳子、渾身の代表作。

♪池野はバロック音楽で敢えて地味な色づけをし、秀逸な本編を邪魔しないよう心掛けたという。

S37('62)／大映京都／パートカラー／シネスコ／1時間38分

■監督：川島雄三■原作：水上勉■脚本：舟橋和郎、川島雄三■撮影：村井博■美術：西岡善信■出演：若尾文子、三島雅夫、木村功、高見国一、中村鴈治郎、菅井きん、小沢昭一

京都・洛北の禅寺の住職とその愛人、そして二人の関係を盗み見る少年僧の愛憎劇を、官能的に描く文芸エロス。川島雄三のシャープな映像表現の中、若尾文子の妖しい美貌と色香に目が眩む。

♪「お経」の響きに発想を得たテーマ曲と他一曲のみによる音楽演出の妙が、存分に発揮されている。

S37('62)／東京映画／カラー／シネスコ／1時間40分

■監督：川島雄三■原作：山本周五郎■脚本：新藤兼人■撮影：岡崎宏三■美術：小島基司■出演：森繁久彌、東野英治郎、左幸子、丹阿弥谷津子、池内淳子、フランキー堺、乙羽信子

文豪・山本周五郎が浦安に暮らした実体験をもとに描いた小説の映画化。三文文士が住み着いた海辺の町で起こる騒動を、個性溢れる登場人物とともに綴る人情喜劇の傑作。

♪群像劇に対応し、音楽もオーケストラからギター・ソロまで様々に姿を変えて物語を後押しする。

S37('62)／大映東京／カラー／シネスコ／1時間36分

■監督：川島雄三■原作・脚本：新藤兼人■撮影：宗川信夫■美術：柴田篤二■出演：若尾文子、伊藤雄之助、山岡久乃、川畑愛光、浜田ゆう子、船越英二、小沢昭一

団地に住む強欲一家と、男を手玉に取る会計係の女との際どい騙し合い。演出、脚本、音楽、その全てが今尚斬新なブラック・コメディの白眉。若尾の悪女ぶりが絶品で、多彩な俳優陣も圧巻。

♪本作の狙いが「能や狂言の様式」と察した池野は能楽囃子を活用。「ゴーゴー」との融合まで試みている。

S32('57)／大映東京／カラー／スタンダード／1時間30分

■監督：吉村公三郎■原作：川口松太郎■脚本：田中澄江■撮影：宮川一夫■美術：間野重雄■出演：京マチ子、山本富士子、船越英二、山村聰、芥川比呂志、穂高のり子、小沢栄太郎

銀座を舞台に、"夜の蝶"と呼ばれた女給たちの意地の張り合いを二大女優主演で描く、豪華一本。実在した伝説のバー「おそめ」「エスポワール」をモデルとした原作も話題となった。

♪アルト・サックス、打楽器、ミュージカル・ソウ等の多彩な響きが夜の銀座の夢幻性を喚起する。

S33('58)／大映東京／カラー／スタンダード／1時間50分

■監督：吉村公三郎■脚本：新藤兼人、千葉茂樹■撮影：中川芳久■美術：間野重雄■出演：菅原謙二、若尾文子、東野英治郎、田中三津子、松山英太郎、見明凡太朗、浦辺粂子

「集団就職」をテーマにした社会派ドラマ。上京者でごった返す上野駅やお化け煙突など、時代を象徴する風物の記録映像としても貴重。若尾演じるマドンナ教師が物語に華を添える。

♪『ヨハネ伝』第十二章二十四節の詩を歌う合唱が、タイトルをはじめ、各所で重厚に響き渡る。

S33('58)／大映東京／カラー／シネスコ／2時間1分

■監督：吉村公三郎■脚本：新藤兼人■撮影：中川芳久■美術：間野重雄■出演：京マチ子、若尾文子、根上淳、船越英二、仁木多鶴子、菅原謙二、浪花千栄子、細川ちか子

京マチ子主演で紡がれる、戦中・戦後と逞しく生き抜いた女舞踏家の一代記。弟子に恋人を寝取られても我が道を邁進する力強いヒロインを、京ならではの気迫で力演する。

♪劇中舞踊曲《日本の夜明け》は必聴！船越英二の吹き替えで指揮をする池野成本人の後ろ姿も必見！

S38('63)／大映京都／白黒／シネスコ／1時間43分

■監督：吉村公三郎■原作：水上勉■脚本：笠原良三■撮影：宮川一夫■美術：西岡善信■出演：若尾文子、山下洵一郎、中村玉緒、中村鴈治郎、西村晃、殿山泰司、浜村純

かつて遊女であった美しい娘と竹人形の職人が交わした清らかな愛情。儚げなヒロインを演じた若尾が、艶やかさの中に垣間見せる無垢な表情は、見る者を惹きつけてやまない。

♪水上ワールドの美しさと悲しみを、池野は絶妙なオーケストレーションで表現している。

S35('60)／東宝／白黒／シネスコ／1時間29分

■監督：鈴木英夫■原作：三田和夫■脚本：井手雅人■撮影：逢沢譲■美術：河東安英■出演：三橋達也、司葉子、稲葉義男、中丸忠雄、東野英治郎、佐々木孝丸、平田昭彦

社長襲撃事件の犯人を匿ってまで特ダネを狙う剛腕記者の野望の行く末――。東京の街頭でのロケ撮影が冴える、ハードボイルド・タッチの社会派サスペンス。クールな鈴木演出、三橋の熱演は必見。

♪弦楽器を一切使用しない、金管と打楽器のみによるエドガー・ヴァレーズ風サウンドが炸裂！

S37('62)／東宝／カラー／シネスコ／1時間35分

■監督：鈴木英夫■脚本：升田商二、鈴木英夫■撮影：逢沢譲■美術：竹中和雄■出演：司葉子、宝田明、水野久美、原知佐子、山崎努、北あけみ、森光子、児玉清

1960年代の広告業界を舞台に、男社会に果敢に挑むキャリアウーマンたちの夢と挫折を描いた珠玉の女性映画。主演の司はじめ、男勝りを気取った女優たちの"男言葉"が妙に可愛い。

♪バロック音楽風の楽曲にエレクトーンを入れ込むところにも、池野の音色へのこだわりがうかがえる。

S39('64)／東映東京／白黒／シネスコ／1時間52分

■監督：今井正■原作：水上勉■脚本：八木保太郎■撮影：中尾駿一郎■美術：森幹男■出演：佐久間良子、三國連太郎、小沢昭一、田中春男、東野英治郎、北林谷栄、殿山泰司

越後の雪深い寒村で、京都・伏見へ出稼ぎに出た夫を待つ若妻に起こったある悲劇。男と女の絡み合う愛憎を、厳冬の雪景色の中でみつめた名作。佐久間の滴るような美しさに目を奪われる。

♪傷口をさらに広げるかのごとき、サディスティックな池野のスコア。鬱屈した音響がトグロを巻く。

S43('68)／大映京都／カラー／シネスコ／1時間22分

■監督：三隅研次■原作：子母沢寛■脚本：猿若清方、杉浦久、吉田哲郎■撮影：森田富士郎■美術：内藤昭■出演：勝新太郎、三田佳子、佐藤允、西村晃、藤岡琢也、ミヤコ蝶々、大川修、戸浦六宏

大映で最後の「座頭市」となった第19作。渡世の義理から一人の博徒を斬った市は、その裏にある目的を知り…。シリーズ5度目の登板となる三隅の、磨きがかかった演出と斬新な殺陣が光る。

♪池野が手掛けた「座頭市」シリーズの3本目。タイトル曲が三隅演出と相俟って本編への期待を否応なしに高める。